この記事では、FIREの基本と、禅が教えてくれる精神の整え方をざっくり説明したうえで、私自身の行動を禅の視点から振り返り、より自由で豊かな生活のための工夫を提案します。FIREを求めた私が「経済」「時間」「心」の三つの自由を得るにはどうすれば良いのか、具体的な方法を探ることでご覧になった皆さんの参考になれば幸いです。
FIREの基本と具体的な三つのやり方
FIREは、「定年まで働かずに済む状態をつくること」を目指すムーブメントで、収入を増やし支出を抑えて貯蓄と投資を進めるのが特徴です。その手法には大きく三つのタイプがあります:
- リーンFIRE — 生活費を徹底的にスリム化し、退職時までに年間支出の約25倍を貯めることを目指す方法です。質素な暮らしを前提にしているため、支出の管理が鍵となります。
- ファットFIRE — 年間支出を抑えつつも、貯蓄率を50%以上に設定し、退職後もゆとりのある予算を確保する方法です。高所得の人が短期集中で資産を積み上げるケースが多いようです。
- バリスタFIRE — ある程度貯蓄したうえで退職し、カフェでバリスタをするようにパートタイムの仕事で必要な分を補う、柔軟な働き方を取り入れる方法です。完全リタイアにこだわらない点が特徴で、私もこのスタイルに惹かれています。
FIREを達成するための目安としてよく使われるのが「4%ルール」です。これは、退職後に資産の4%を年ごとに取り崩せば、およそ30年間資産が持続すると言われる指針で、インフレに応じて調整しながら生活費を賄います。絶対的なルールではありませんが、資金計画を立てる際の目安として役に立ちます。
禅が教える精神的自由とシンプルな暮らし
禅の核心は座禅にありますが、それだけが修行ではありません。国際禅協会によれば、禅の実践は日々の営みそのものを修行と捉え、「今ここ」に意識を向けて物事の本質を見極めることにあります。禅の美学には「簡素」「自然」など七つの要素があり、非執着や静けさといった価値観を表しています。こうした美意識を取り入れることで、心身の健康や創造性が高まるとする研究もあります。
禅の思想を身近に落とし込んだブログ「Zen Habits」には、日常生活に活かせる12のルールがまとめられています。私が特に大切にしているのは以下のポイントです:
- 一度に一つのことをする。 食事中にスマホをいじらず、掃除のときには掃除だけに集中するようにしています。
- ゆっくりと丁寧に動く。 家事や仕事を急いで終わらせるのではなく、一つひとつの動作を味わうことで心に余裕が生まれます。
- 必要なものだけを持つ。 禅僧は必要最低限の物だけを持つと言われますが、私も服や本を整理し、本当に気に入ったものだけを残すようにしたところ、部屋だけでなく心もすっきりしました。
- 日常を瞑想にする。 掃除や料理などの家事を無心で行うことで、頭の中がクリアになり、リラックスできる時間に変わります。
- 感謝の習慣を持つ。 食事の前に食材や生産者へ思いを寄せ、家族と一緒に「いただきます」を唱えることが、豊かさを感じるきっかけになっています。
禅の実践は一人だけのものではありません。道場や坐禅会に参加して仲間とともに学ぶことが推奨され、作務(掃除や料理などの奉仕)を通じて他者への思いやりを育むとされています。
自分の取り組みを禅的視点で振り返る
セミリタイアを目指す過程で、私がどのような行動をしてきたのか、禅の観点から振り返ってみます。
- 無駄遣いを減らし貯蓄を増やした。 必要なものだけを買い、外食や娯楽を減らしたことで支出が大きく減りました。これは禅の「シンプルな暮らし」と一致しており、家に物が増えないことは精神的にも心地よく感じています。
- 投資や副業に挑戦した。 経済的自由を近づけるために積極的に投資を学び、副業で収入源を増やしました。数字に囚われすぎないよう、投資は「手段」であることを忘れないようにしています。禅の非執着の教えを思い出すことで、相場の変動に一喜一憂せずに済みました。
- 節約一辺倒の生活に偏った。 FIREを意識するあまり、友人との食事を断ったり趣味にお金をかけなかった時期がありました。禅では他者との関わりや奉仕が大切とされ、心の豊かさにはバランスが必要だと気付きました。今は、バリスタFIREのようにパートタイムで社会に関わりながら自由を確保する方法が自分に合っていると感じています。
- 家事を瞑想代わりにしている。 掃除や料理を丁寧に行うことで集中力が上がり、心が整うのを実感しています。これも禅の「瞑想は日常のあらゆる場面にある」という考えに沿っています。
こうして振り返ると、FIREに向けた取り組みの中でも、禅の教えと調和している部分が多い一方で、経済的な目標を追うあまり心の豊かさを置き去りにしていた面もあったと気づきました。
これからの提案—より自由で豊かな生活に向けて
最後に、FIREと禅を両立させていくうえで私が心がけたいことや、読者の皆さんにも役立つかもしれない提案をまとめます。
- 資産に執着しない。 貯蓄や投資は自由を支える手段であり、目的ではありません。「あといくら貯めればリタイアできる」といった数字に囚われすぎず、今できる経験や学びを大切にする。これが一番難しいですが、挑戦していきたい。
- 持ち物を絞り、支出をシンプルに。 不要な物を手放し、本当に必要なものや心から好きなものだけに囲まれる生活を目指す。
- 日常の儀式を持つ。 朝の瞑想や食事の前の感謝など、自分なりの習慣を設け、心を整える時間が確保する。
- 余白のあるスケジュールを心がける。 やることを詰め込みすぎず、「一度に一つ」に集中することでストレスを減らして、丁寧に物事をこなす。
- コミュニティとつながる。 ボランティア、趣味のサークルなどに参加し、他者と支え合う場を持ち、社会との接点を保ち、FIREの欠点でもある社会資本の欠如を補う。
- 柔軟な働き方を選ぶ。 完全に仕事をやめるのではなく、現在行っているパートタイムやプロジェクト単位の仕事で収入と社会とのつながりを維持する
おわりに
FIREと禅は、一見すると異なる世界に見えますが、「自分らしく自由に生きたい」という共通の目的を持っているように感じます。収入と支出をコントロールしながら経済的基盤を整え、座禅やシンプルな暮らしで心を整える。そうしてお金と心の自由を両立させることで、現代の忙しさや不安から少しずつ離れ、人生の舵を自分の手に取り戻すことができると感じています。
私自身FIRE(セミリタイア)前の毎日は、日々幸せを感じていられませんでした。FIREの道のりは一朝一夕にはいきませんが、禅が教えてくれる「今この瞬間を大切にする心」を持ち続ければ、FIREを目指す過程そのものが豊かな旅になるかもしれません。
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